↑草木染で染められたウールの糸

↑こちらはシルクの糸
トルコの伝統的絨毯・キリムには、自然の草木や虫などから取れる天然の染料を用いてこられました。
特に茜(あかね)の根からとれる深紅の染料は、ヨーロッパで珍重され、トルコの有力な輸出品でした。
19世紀にヨーロッパで合成染料が開発され、伝統的な染色よりも簡単に染まるため、だんだん天然染料による染色がすたれてしまいましたが、近年、伝統を見直す気運が高まり、ごく一部ですが、総天然草木染めも復興してきています。

ただ、残念なことに現在では化学染料で染められたキリムを草木染と偽って販売する業者が後を絶ちません。
もちろん、化学染料での染めでも現在はすばらしい色を出すことができますし、50年前のものと違って激しい褪色の心配もありません。しかし、草木染は使い込むほどに味が出るため、やはり1枚は手にしたいもの。化学染料に比べ、大変な手間がかかるために高価ですが、やはり人気。そのために草木染を偽ってキリムを高く販売する業者がいるのも事実です。

当店ではイスタンブールのパートナー経由、糸の調達から染め、織りを直接手配し、最高品質の草木染のキリムを製作しています。
糸の染色は草木染といえばココ!といわれるトルコでも指折りのコンヤの工房で染めてもらっています。
どんな風に染められているのかレポートしてきてくれましたので、ご紹介しますね♪

キリムや絨毯の色といえば茜(アカネ)の赤。茜のトルコ語キョクボヤはそのまま草木染の意味でも使われていて、染色のルーツが茜にあることがわかりますね。
 
糸を染めるにはまず茜の根など染料になるものを細かく砕きます。ちなみに茜はトルコの大地では、どこにでも自生しているようなポピュラーな植物です。

明礬やレモン汁などの触媒と一緒にお水に混ぜて火にかけます。グツグツグツ…。
触媒によって、同じ染料でも違う色に染まります。この辺が草木染の面白いところ…。
 
もう良いかな?えっ味見?自然のものしか入っていないから、口に入れても大丈夫〜というデモンストレーションでした。ホッ。
糸の投入〜。せっかく良い染めにするんだから、糸も良いもの使いましょう。
どれどれ、できたかな?まだまだ色は浅そうです。
この後、洗い、工房の裏庭で天日干し、そしてまたさらに染め…を数回繰り返します。
同じ草木染でも機械で乾燥させる工房もありますが、こちらの工房では徹底的に昔ながらの方法を保っているんです。

同じ染料を使っても、毎回同じ色を出すのは至難の業。
洗い方、天候にも出来上がりの色は左右され、染め直しが繰り返されることも…。

化学染料なら溶液にジャッポンと浸して機械で乾燥させて、それでおしまいなんです。

大体キリムの糸を染める場合、10色ぐらい必要になりますが、キリム100枚分くらいを染めるのに、大量に染めることが簡単な化学染料なら3時間で染め上がるところ、こちらの工房では丹念に染め、乾かしを繰り返すため、1ヶ月半くらいかかるそうです。

けれど、そもそもキリムを織るための染めは遊牧民の女性たちが生活の中で行ってきたもの。化学染料を使う染めのような大量生産のテクノロジーとは正反対のものなのです。
たくさん染めるときはこういう大釜を使います。染めたてほやほやはアツアツです。(^^ゞ


工房で織られたキリムと一緒に奥の方で糸が干されているのわかりますか?
    
色見本のために織られたミニミニキリム。コレクションしたくなっちゃいます。(笑)
←染め上がった糸の前で満足げな工房のオーナーさん。
彼はヨーロッパのTVでも取材されたり、あの「キリムのある素敵な暮らし」にもちらっと顔写真が載っているほどの第一人者なのです。

毎年良い色をありがとう〜。


さて、これで糸は完成。
こちらの工房でもキリム織りはされているのですが、コンヤのキリムはちょっとがっしり厚めのもの。
当店のキリムはこちらの工房のスタンダードよりももっとしなやかで細い糸を使っているので、その糸の質を最大限に引き出すため、もっと細かい織りのできるトルコ南西部の村へ運びます。
染色工房のオーナーさんも「オタクの糸はいいねぇ〜」といつもほめてくれるんだそうです。(^^)v

今ものんびり、遊牧民のリズムで染められた草木染の糸は本当に見ていてホッとするような、味わい深さがあります。そんな糸で織られたキリムの魅力は言わずもがな、でしょう?

<染色の材料>
地方によって使われる色や染料が異なりますが、代表的な材料は・・・

■赤■紫■赤紫・・・茜(あかね)の根、たまねぎの皮、ヘナ、ブラックベリー、コチニール(虫)
■黄色・・・ザクロ、金木犀の花、カモミール、サンザシ、ヘーゼルナッツ(はしばみ)の葉
■青■水色・・・藍、たいせいの葉
■緑・・・イチジク、セイヨウカリン、アーモンド、葡萄の葉、ピスタチオの殻
■茶系・・・クルミ、栗、オレンジの皮、たまねぎの皮
触媒剤…葡萄の汁、ヨーグルトの汁、かんきつ類の汁、牛や羊の糞尿(!)、イースト、鉄粉、灰など


<色にも意味が?>
 モチーフ同様、使われる色にも色々な思いや意味がこめられています。たとえば・・・

■赤・・・愛情や幸福
■黄色・・・黄色は太陽や黄金、こんがり焼けたパン、たわわに実った麦穂の色。豊かな実や暮らしを表しています。
■緑・・・豊かな草原の色。春の喜びと天国を表す色。
■青■トルコブルー・・・深い海や空の色で、神秘を表す色。悪いものを跳ね返す魔力を持つ色で、お守りの色。

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