絨毯・キリムができるまで 

遊牧民たちの生活に必要不可欠な絨毯やキリムは、もともとは羊毛や綿花を刈り取り、糸を紡ぐところから、全て遊牧民の女性の手で行われてきました。
こちらでは簡単ですが、その様子をご紹介します。

■糸を紡ぐ

まず、刈り取った羊毛についているゴミ等をこの道具を使って取リ除きます。

その後、少しずつ手で羊毛を撚りながら繰り出し、上のキルマンといわれる道具を使って縒って行きます。


次に
糸巻きを使って、2本の糸を撚り合わせて毛糸にし、巻きつけて行きます。

こうしてていねいに手で紡がれた毛糸は、羊毛の繊維の長さが生かされており、機械で紡いだものよりも丈夫で光沢のあるものに仕上がります。

シルクの場合はこんな感じです。
蚕(かいこ)から一本ずつ繰り出される細〜い生糸を15本くらいまとめて左上の機械で巻き取って行きます。(こちらは今や電動)
そして、この糸を何本かより合わせ、今度は右上の機械で紡いで行きます。

■糸の色を染める
19世紀に合成染料が開発されてからは、手軽に染められる合成染料も広く使われる様になっていますが、近年になって昔ながらの草木染めを復活させる動きも活発で、一時は廃れてしまった先祖代々伝わる染色方法が復元されています。
(詳しくは『草木染めと色の話』をご覧下さい。)

こちら→は、
糸を煮出して染めるためのたらい(バケツ?)です。

さて、いよいよ絨毯やキリムを織って行く作業に入ります。
絨毯の場合もキリムの場合も、どちらもまずは織機に縦糸をかけて行きますが、この縦糸の混み具合で織られて行く絨毯・キリムの目の細かさが決まります。

縦糸は一本ずつ互い違いに取り分けられ、「おさ」によって前後に分けられます。

■絨毯を織る
織る』というと何となく機でぎったんばっこん、というイメージですが、絨毯を織るというのは縦糸と横糸に一本ずつ色糸を結んで行き、その結び目が集まることで模様が浮かび上がって来る、いわば点描の世界です。
その為、
絨毯のデザイン画は方眼紙に細かく書かれていて、1マス毎に色が塗り分けられています。
織り子さん達はこのデザイン画を見ながら、一本一本色糸を結び付けては握りバサミで切り、結び付けては切り、という作業を繰り返します。

水平方向に一段織りあがった所で結び付けられた色糸の毛足を更に揃えて写真右側の
専用のハサミで切り、横糸を通し、左側のくし状の道具を使って上から糸を押さえつけて行きます。

■キリムを織る
キリムを織る場合も縦糸を掛けるところまでは絨毯と同じですが、キリムの場合は横糸に色糸を使い、横糸で模様を作っていきます。

前後に分けた縦糸の、後ろ側の糸ばかりを中指と親指を使って、同じ色が続く所まですくい上げて横糸を通し、今度は同じ部分の前側の糸を拾ってさっきとは逆方向に横糸を通します。
そして、適当なところで絨毯の時と同じく、くし状の道具で目を詰めるように上から押さえつけます。

キリムの場合は色糸が同じ部分を続けて織っていくので、織りかけのキリムは織り掛けの絨毯とは違い、織られた部分が必ずしも水平には出来あがって行きません。

デザイン画は使われない場合も多く、遊牧民の家々に伝わるモチーフを織り手の自由な発想でちりばめながら織られて行きます。

その為、キリムでは必ずしもデザインは左右対称ではありませんし、ところどころ『気まぐれ』のように突如として違った色が使われることもあり、かえってそれが面白い味を出しています。

織りあがった絨毯やキリムは最初の
『洗い』に出され、織られている途中でついた汚れなどがきれいに落とされます。キリムの場合は更に表面の余分な遊び毛を焼き落とします。


■こうして…
手間ひま掛けて織り上げられた絨毯やキリムは、
織り手の娘さんの嫁入りの日に日の目を見るまで、大切にとっておかれます。もちろん今では商業ベースにのって織られる絨毯の方が多い様ですが、中には大事にとっておかれたものが、何らかの理由(経済的な理由など)で1枚ずつ売りに出される事もあるのです。

そのような大切な絨毯は、こちらから売ってくれ、と押しかけていくのは相手の足元を見るようなことになってしまうので、辛抱強く幸運な出会いを待つしかありません…。

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